ファチマの聖母マリア

中国におけるカトリック教会--II:迫害と混乱--

The Fatima Crusader, Issue 67, Summer 2001より

ジョゼフ・M.C.クン

これはこの論考(第Ⅰ部は65号で公表された)の結論部分である。そしてジョゼフ・クンがカナダ、オンタリオ州ハミルトンでのわれわれのファチマ2000平和会議において行った講演に基づいている。ジョゼフ・クンはローマカトリック信仰のために血を流さない殉教を蒙った偉大なクン枢機卿の甥である。中国共産主義者たちは中国における指導的なローマカトリック司教であることを理由にクン枢機卿を32年間投獄した。彼は偽りのカトリック愛国協会(Catholic Patriotic Association=CPA)--中国におけるローマカトリック教会を滅ぼすために中国共産主義者たちによって設立された「教会」--に加わることによって教皇をもまたカトリック教会をも裏切ろうとはしなかった。われわれは今、ジョゼフ・クンが進行中の中国における共産党の欺瞞を偽りの教会--カトリック愛国協会--の欺瞞と共に記述しているとき彼に加わる。


愛国協会と呼ばれている無効の教会が地下教会における彼ら自身の兄弟姉妹たちの血の犠牲でそのように多くのローマカトリックの修道会や諸制度によって抱擁されてきたということに気づくことは非常に悲しいことである。

約50人の愛国協会の神学生や司祭が合衆国におけるさまざまのローマカトリックの神学校において、そして等しい数の者が自由世界における他の場所で勉強している。合衆国におけるこのプログラムは愛国協会のためにメリノール会によって組織されている。彼らはさまざまの司教区から授業料全額、部屋代と食費の奨学金を与えられている。そしてそれはあなたたちの寄付金からである。これらの奨学金は合衆国だけでも1年に100万ドルかかっている。彼らの勉学が終わると、愛国協会の神学生たちは地下教会のローマカトリック教会の司教たちによってではなく、彼らの愛国協会の司教たちによって叙階されるために中国へ戻るであろう(ある者たちはすでに戻った)。彼らは、私が以前に述べたように、教皇との親しい交わりのうちにはない愛国協会の司教区において奉仕するであろう。

多くの人々がすでにメリノール会のことを、そしてなぜその会が愛国協会の神学生たちを援助するのかを尋ねた。これらの質問に対するメリノール会の回答の多くは次のように同じものであった:

「...数年前に、ヴァチカンの高官たちは、われわれができる中国から何人かの神学生たちを、そしてもし可能ならば合衆国の神学校へ、受け入れるよう、われわれを励ました。それらの目的は彼らに適切なローマカトリックの教育を得させることであった(そして得させることである)、そして彼らを普遍的教会に触れさせることであったし、今もそうである。われわれは彼らのうちから約40人を選び出すことができた...われわれは教皇の和解の政策に従うことを選んでいるのだ...われわれは一つのグループを他のグループより以上に支援することはない。」

われわれは、なぜメリノール会がその回答においてこれらの「ヴァチカンの高官たち」の名前、機会そして日付を、彼らが合衆国へ中国から「何人かの神学生たち」を後援するようにメリノール会を励ましたとき、明らかにしそこなったのか、そしてなぜメリノール会は「彼らのうちから40人を選び出した」そのすべてが愛国協会に属しているのかを指摘し損なったのか、不思議に思う。もしメリノール会が、その回答において主張したように、実際に「一つのグループを他のグループより以上に支援することがない」ならば、なぜメリノール会はただ愛国協会の神学生たちだけを合衆国に連れてくるのか? なぜメリノール会は地下教会の同じ数の神学生たちを合衆国に連れてこないのか? この問題について言えば、なぜメリノール会は一人の地下潜行の神学生さえ合衆国に連れて来ないのか?

自由世界におけるいくつかの司教区はそこで研究する愛国協会の司祭たちに、彼らにミサ聖祭を献げ、あるローマカトリックの小教区において公然と他の秘蹟を行うことを許して、諸々の権限を与えた。彼らの愛国協会の司教たちに奉仕するために戻る彼らの義務のことを考えれば、これらの愛国協会の司祭が生涯にわたる心の回心と真のカトリック信仰の生涯にわたる信仰告白をなしたといういかなる決定的な証拠もない。ある愛国協会の司祭からこれらの秘蹟の受領者である多くのカトリック教徒は完全に暗闇の中にいる。なぜなら、彼らはこれらの司祭の正体を知らないからである。

私が今述べたことについて精通している多くの修道者やカトリック教徒がいる。彼らはまた力と権威と指導力を持っている。しかし、彼らは思いきって意見を述べることを選ばなかった。この沈黙は中国政府によって自分たちの抑圧的な宗教政策の承認として解釈され得るであろう。この沈黙はまた地下教会によって一つの裏切りとして解釈され得るであろう。

中国は、単に多くの教会指導者たちが誤ったそして誤り導くシグナルを送っているためばかりでなく、また自由世界の大部分の政府が中国における人権改善への彼らの要求について真剣ではないためにも、その抑圧的な宗教諸政策を続けている。

そうこうしている間に、人権を貿易から切り離す西側における多くの国の現在の政策はわれわれが利益と貿易のために人権侵害を許容するであろうという一つの明確なしかし誤ったメッセージを中国に送っている。この政策はまた中国政府に、その国際関係に影響することなしに宗教信者たちを迫害し続けることができるという確信をも与えている。

「ゼロ寛容」--それは聞き慣れたものと響くか? ゼロ寛容は団結した世界における標準的な言い回しである。いくつかの例を挙げれば、多くの多国籍企業はしばしば利害の衝突のゼロ寛容の彼らの政策、セクハラのゼロ寛容、人種差別のゼロ寛容、そして児童労働のゼロ寛容を口にする。これらの政策の多くは基本的人権原理の擁護に直接関係している。にもかかわらず、ゼロ寛容の政策、あるいはその問題について言えば、人権侵害の最低限寛容さえ中国でビジネスを行っているそれらの会社の政策の中にはその道を見つけなかったのである。

これらすべてのゼロ寛容政策を持つことによって人権に対する強い関わり合いをその従業員に要求する企業にとって、これらの同じ企業が、ひとたび20時間離れた中国においてはゼロ寛容のこの政策を断念することを、より以上に喜んでいるとき、そのことは非常に悪いこと、偽善すれすれのことである。貿易を人権から切り離す政策を背後に隠しているのに、これらの会社が彼らの「30枚の銀貨」と交換に中国における残虐な宗教迫害を見て見ぬ振りをすることはもっと偽善的でさえある。

中国は自由世界からの多くの援助によって過去20年の間に重要な経済発展を成し遂げた。この進歩は、自由世界の多くの指導者が望んだように、真の宗教的自由をもたらさなかった。それゆえに、自由世界の諸政府にとっては、そのような宗教的迫害が続き、そして強まっているのに、世界貿易機構(WTO)へ加盟するよう中国政府と交渉し、そして中国政府を励ますことは非常に無邪気なこと、あるいは非倫理的なことでさえある。そのような行為は50年間の中国における宗教的迫害を許すことに等しい。自由世界の指導者たちが北京で中華人民共和国の建設50周年記念祝賀会に参加したとき、彼らはまた宗教的囚人たちが同時に中国における宗教的迫害の50周年記念を祝っていたということを思い起こさなければならない。

上述のすべての行動に基づいて、おそらく多くのローマカトリックの司教たちや修道会は愛国協会教会と共に働くことが母なる教会へ中国が戻るための最も都合のよい道である信じていると立論することができるであろう。もしこの理論がこれらのローマカトリックの諸施設の真の目的であったならば、彼らはまず中国における忠誠な地下の司教たちの忠告を求めるべきであった。彼らはそうしなかった。彼らは自由世界を通じてどの他の教区長にも彼らが尊敬を表したであろうように、教区長としての地下教会の司教たちの権威に同じ尊敬を表するべきであった。彼らはそうしなかった。愛国協会教会を支持しているこれらの司教や修道会上長たちは実際には、われわれの教皇が断固としてそうすることを拒否されたのに、愛国協会を普遍的教会の一部として認めているのである。

もしこれらの愛国協会の司教たちが、海外の彼らの恩人たちに告白したように、教皇に忠誠であるならば、中国におけるこの恐るべき迫害が教皇に多くの苦しみを引き起こしているということを理解しなければならない。彼ら、愛国協会の司教たちは、キリスト者としてそして善意のしるしとして、進行中のローマカトリック教会の迫害が、悪しき行為であり、また人権の重大な侵害であるがゆえに、直ちに止められるべきであると、彼らの政府を説得し、またそのことを思い切って発言すべきではないか? 彼らはそうしなかった。愛国協会の司教たちに対して友好的であるそれらのローマカトリック司教たちそしてローマカトリック修道会上長たちは迫害が止むまで愛国協会に対するこれらの寄付金やプロジェクトを差し止めることによって地下教会の司教たちに対する支持と一致を示すべきではなかったか? 彼らはそうしなかった。

900万の忠誠なカトリック教徒は非常に悲嘆にくれ、そして困惑している。彼らの心の中で、彼らは「教皇の首位性」はカトリックであることの基本の一つであるということを知っている。彼らの心の中で、彼らは教皇が彼らの背後にしっかりとおられるということを知っている。彼らの心の中で、彼らは教皇が彼らを決して見捨てられないということを知っている。しかしながら、これらすべての困惑させ、矛盾対立した出来事に直面して、中国における忠誠なカトリック教徒は、身体的に共産主義者の牢獄に監禁されることによってよりも、われわれ自身の教会の諸々の行為によって、もっと欺瞞的な迫害を経験している。

あなたたちが愛国協会へのすべての寄付そして愛国協会との協力を見るとき、あなたたちが地下教会のためのいかなる並行的な寄付やプロジェクトもないということを見るとき、あなたたちは愛国協会とのこれらのプロジェクトが悪いと感じるか? あなたたちは愛国協会とのこれらのプロジェクトは決して起こるべきではなかったと感じるか? そしてあなたたちは愛国協会とのこれらのプロジェクトは単なる偶然の一致ではあり得なかったと感じるか? あなたたちは聖座が今は愛国協会を受け入れているという印象を得ているか? あなたたちはまたヴァチカンがおそらく900万人の忠誠なカトリック教徒を見捨てる用意がある、あるいは愛国協会を母なる教会に加わるように説得する代わりに、愛国協会との合併を彼らに強いる用意があるという印象を得ているか? あなたたちはそもそも、ヴァチカン内にこれらの出来事が起こることそしてそれらが起こり続けることをを承認し、励ます司教たちや枢機卿たちがなぜいるのかを、不思議に思うことがあるか?

共産党政府は1950年代における強制と迫害によって300万のカトリック教徒を滅ぼすことに成功しなかった。今や政府は誤った情報、欺瞞そして強化された迫害を越えてそしてそれの上部にある混乱を通じてそれ自身の教会内部からローマカトリック教会を打ち負かすことを希望している。中国政府は地下教会の、教皇に対する尊敬、信頼、従順そして忠誠を、いざとなったときに中国におけるカトリック教会に対する教皇の権威の問題が重要でないものとなるであろうという程度まで浸食することに非常に懸命に努力している。私は共産主義者たちが陣地を獲得しているように見えると言うことを恐れている。

しかしながら、私は、自分としては、教皇がこれら900万の忠誠なカトリック教徒を見捨てることを誰にも決して許されないであろうと信じている。

この理由で、1994年4月にニューヨークの聖ヨハネ教会で話しながら、クン枢機卿はこう言った:

「カトリック教会は中国において決して消え去ることはないであろう。私はわれわれの聖なる御母マリアが御自身の時において中国を救ってくださるまであなたたちの祈りと公然たる支持でもってわれわれと共にとどまられるようあなたたちが忍耐を持ってくださるようこいねがいます。」

2004/02/24 三上 茂 試訳

作成日:2004/02/24

最終更新日:2005/03/22

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