ファチマ・クルーセイダー

講演者の抜粋:

ロシアは迫害の仕方を世界に教えた

The Fatima Crusader Issue 84, Winter 2006

デイヴィッド・アレン・ホワイト、PH.D.

以下はホワイト博士の会議での講演:「ロシア文学において予告されたロシアの諸々の誤謬」(ソルジェニーツィン)からの編集された抜粋である。

[ロシアから]広められたこれらの誤謬の二三の他の点についてこれから述べましょう。私は『収容所群島』からのいくつかの抜粋を読もうと思います。というのは、それらはロシアが広めている諸々の誤謬:すなわち、無神論、物質主義、偽りのユートピア - を非常に明白に描写しているからです。そしてここにもう一つのことがあります。ソルジェニーツィンから引用します:

「ここにそれが現実に起こったように、あの時代からの一つの場面描写がある。ある地区党委員会がモスクワ地区において開かれていた。その委員会は一人の最近逮捕された書記に取って代わった地区党委員会の新しい書記がその議長を務めた。会議の終わりに同志スターリンに対する賛辞が求められた。もちろん、全員が立ち上がった(ちょうど会議の間スターリンの名に言及されるたびに全員がさっと立ち上がったのと同じように)。小さなホールは「一つの熱烈な大喝采にまで高まる嵐のような拍手」で反響した。

「3分間、4分間、5分間『一つの熱烈な大喝采にまで高まる嵐のような拍手』は続いた。しかし両方の手のひらは痛くなり、持ち上げた両腕はすでに痛んでいた。そして老人たちは極度の疲労から息を切らしてハアハア言っていた。それは本当にスターリンを崇拝していた人々にとってすらこの上なく愚かなことになっていた。」

「しかしながら誰が敢えて最初に[その拍手]を止めるであろうか? 地区党委員会書記は最初に拍手を止めることができたであろう。彼は演壇に立っていた。そして大喝采を求めたのは彼であった。しかし彼は新人であった。彼は逮捕された一人の男に取って代わったのであった。彼は恐れていた!結局のところ、NKVD[ KGB の前身]の職員たちは、皆が拍手喝采をしているホールに立っており、誰が最初に[拍手を]止めるかを見守っていたのであった。」

「そして指導者には未知のあの薄暗い小さなホールの中でその拍手は続いた - 6分、7分、8分も! 彼らはだめになってしまった!彼らはやっつけられてしまった!彼らは今や心臓麻痺で倒れるまで止めることができなかった。混雑していたホールの後ろの方では彼らはもちろん少しばかり人を欺いて、あまり頻繁にでなく、あまり力強くでなく、それほど熱心にでなく拍手することができたが、誰もが彼らを見ることができたあの上の最高会議常任幹部会と一緒ではどうだろうか?」

「自主的で強い精神の持ち主である地方の製紙会社の取締役は最高会議常任幹部会と一緒に立っていた。その状況のあらゆる虚偽とあらゆる不可能性に気がついていても、彼はなお拍手を続けていた!9分間!非常な悲しみのうちに彼は地方党委員会書記を見守った。しかし書記は敢えて拍手を止めようとはしなかった。狂気!最後の人間に!彼らの顔に見せかけの熱狂をたたえ、かすかな希望をもってお互いに顔を見合わせながら、地方の指導者たちは、彼らが立っているところで倒れるまで、担架でホールの外に運び出されるまで、ただただ拍手をし続けていた。そしてそのときでさえ残された者たちはたじろがないのであった...」

「それから、11分後に製紙会社の取締役は事務的な態度を取って自分の椅子に腰掛けた。そして、おお、一つの奇蹟が起こったのだ!普遍的な、形式ばらない、言語に絶する熱狂は何処へ行ってしまったのか? 一人の人間と較べて、他のすべての人は死んだように立ち止まった。そして腰を下ろした。彼らは救われたのだ!リスはその回転する輪からまったくスマートに跳び降りたのだ。」

「しかしながら、それは彼らが自主的な人々が誰であるかを発見したやり方であった。そしてそれは彼らが自主的な人々を排除するために採るやり方であった。その同じ夜その会社の取締役は逮捕された。彼らはまったく異なったある事柄を口実にして彼に容易に十年[の刑]を張り付けた。しかし彼の尋問者は、尋問の最終文書である書式206にサインした後に、その取締り役に次のことを思い起こさせた:
『拍手を止める最初の人間には決してなるな!』」注1)

ここでの誤りは何でしょうか? 一つの異なった種類の集団主義です。それは、われわれが実際一つの群に中の羊であるという考えです。そしてわれわれはわれわれを脅えさせる人には誰でも従うでしょう。われわれは強くて、自主的で、真実を語る人々、偽りの下で生活することの不条理について真正の感覚を持っている人々には従わないでしょう。われわれはただ同調するだけでしょう。

集団農場を形成する以外に集団を形成する他の仕方があります。そしておそらくロシアが世界中に広めてきた最もぞっとさせる集団主義は、そこでわれわれが皆何かあることをすることを恐れて同じことを考え、同じことを行う、集団的な思想と行動です。

今私はあなたたちに一つのシリーズを読んでいます。これは再び『収容所群島』から、人々がどんな廉で逮捕されるようになるかそのことについてです。そして私がこのようにする一つの理由はただわれわれが重大な迫害のために準備する必要があるということを非常にはっきりさせるためです。

ロシアが世界に教えたことは何でしょうか? 迫害の仕方です。私は再びソルジェニーツィンを引用します:

「自分の針を取っておこうとしたある仕立屋は針を失わないようにとそれを壁に貼ってあった新聞の上に突き刺した。そしてたまたまその針をカゴナヴィッチ(あるソビエトの政府高官)の眼に突き刺した。客の一人がこのことを目撃した。第58項、10年[の刑](テロリズム)。」

「ある運送業者から商品を受け取った女子販売員はそれを一枚の新聞紙の上に置くように指示した。他の紙がなかったからである。沢山の石鹸が同志スターリンの額の上に落ちた。第58項、10年。」

「村のクラブ・マネージャーが同志スターリンの胸像を買いに彼のガードマンと一緒に出かけた。彼らはそれを購入した。胸像は大きくて重かった。彼らはそれを二人で一緒に樽に入れて運ぶべきであった。しかしマネージャーの地位は彼にそうすることを許さなかった。『よし、お前がそれをゆっくりと持って行くように工夫しろ』。そして彼は先に行ってしまった。年老いたガードマンはそれをどのようにしたらよいか長い間考えたが考え出すことができなかった。彼はそれを脇に抱えて運ぼうと努めたけれども、胸像に腕をまわすことはできなかった。前面にそれを抱えようと努めたけれども、彼の背中に痛みを与えた。そして彼はバランスを崩して後方へ投げ出された。最後に彼はどうすればよいか、その方法を考え出した。彼は自分のベルトをはずし、同志スターリンのために首縄を作り、それを自分の首にまわし、このようにして胸像を肩にかつぎ、村を通り抜けた。よろしい、それについて議論すべきことは何もなかった。それは明々白々なケースであった。第58項、テロリズム、10年。」

「耳が聞こえず口のきけない一人の大工が反革命煽動のために宣告を受けた。どのようにしてか? 彼はあるクラブで床に横たわっていた。あらゆるものが一つの大きなホールから取り除かれていた。そしてそこにはどこにも釘あるいは鈎はなかった。彼が仕事をしている間、彼は自分のジャケットと制帽をレーニンの胸像に引っかけた。誰かが入って来てそれを見た。第58項、10年。」注2)

これは何頁にもわたって続きます。そしてそれはまったくぞっとさせるものです。しかしあなたたちは、何百万、何千万の人々がどのように収容所に送られたかを理解するようになります。そしてあなたたちはまたなぜ人々が彼らの隣人たちを訴えるか、その理由を理解します。もし私があなたを訴えるべきであったとすれば、そのときそれは私がよい人物であるということを意味します。それゆえ、私はあなたが私を訴える前にあなたを訴えなければならないのです。そしてあなたたちは病的でキリスト教的愛にまったく反する一つの思想体系を発展させるのです。汝の隣人を汝自身と同じように愛するなかれ、汝の隣人を、汝の隣人が汝を訴えることができる前に訴え、汝の隣人を逮捕せしめよ。

ところでこの狂気をわれわれは何か正気でないあるものとして見るかもしれませんが、しかし私は、ここから飛行機で帰国なさるあなたたちの誰もが西欧に広まっているロシアのこの誤謬を経験されたのだと、あなたたちに告げたいと思います。私は旅行しているときに80歳くらいの年輩の女性が空港で裸にされて検査されるために連れて行かれるのを見ました。そして私がここへ来る途中で、22歳の女性が私が金属探知器をやり過ごしたと言い張ったときズボンを下げることを強制されました。そして彼らは私のどこからもいかなる金属も見つけることはできませんでした。これは狂気です。そしてそれがなされている理由は、われわれが不服を言わないように、そして何であれ彼らがわれわれに課そうとしていることに慣れるように、われわれを一つの群に変えることなのです。そしてわれわれはそうしつつあるのです。それは誤りです。それはロシアから来ています。それは単なる始まりにすぎないのです。

注:

  1. Solzhenitsyn, Alexander. The Gulag Archipelago(New York: Harper and Row, 1973), pp.69-70.

  2. Solzhenitsyn, Alexander. The Gulag Archipelago II(New York: Harper and Row, 1974), pp.293-294.

2007/03/14 三上 茂 試訳

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作成日:2007/03/14

最終更新日:2007/03/14

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