ファチマの聖母マリア

ニュース分析:イラク侵略の背後の共産主義ロシア

The Fatima Crusader, Issue 34,Oct-Nov. 1990より

ドン・マックアルヴァニー.

ドン・マックアルヴァニーによる1990年8月号の"Intelligence Advisor"のこの論考はゴルバチョフと共産党ロシアが中東における彼らの大きな攻勢を始めているということを明らかに示している。

マックアルヴァニーによるこの報告における諸々の事実と分析は「ロシアが戦争を起こすでしょう...」というファチマの聖母の予言を実証している。それはまた、ロシアは、教皇がしなければならないようにはマリアの汚れなき御心へ奉献されていないという、『ファチマについての全真実』の第II巻において最近公表されたフレール・ミッシェルの結論がいかに正確であるかということをも論証している(The Fatima Crusaderのこの号p.25を見よ)。教皇が聖母のこの命令に最終的に従う場合にのみ、われわれは戦争と絶滅から自由であろう。もし教皇がずっと長く遅らせるならば、ファチマの聖母が予告なさったように、「国民全体が絶滅させられるであろう。」

これらの「目を開かせる」ページを読んで、あなたの自由と安全がまさにこの時期に非常に不安定なものであるということを悟りなさい。あなたは共産主義者の熊の裏切りの鈎爪があなたに近づいているのを理解し始めるであろう。

われわれの唯一の希望はファチマの聖母である。「ただ聖母だけがあなたを救うことができる」とファチマ・メッセージは厳かに私たちに告げる。このことが何を意味するかをもっとよく理解するために、ポール・レオナード・クレイマー神父の「破壊へのカウントダウン」p. 4とフレール・ミッシェルによる「ファチマ第2の秘密」P. 20を読みなさい。そのことについてあなたがすることができることはグルーナー神父によってp. 3でそしてp. 12のアーサー・スキナー(Arthur Skinner)の報告によって説明されている。

燃え上がる中東:ペルシャ湾における石油戦争

「われわれの目標は西側がそれに依存している二つの大きな宝庫:ペルシャ湾のエネルギーの宝庫と中央および南部アフリカの鉱物の宝庫の支配権を獲得することである。」レオニード・ブレジネフ、1973年。

序論

8月2日木曜日、イラク大統領サダム・フセインの命令の下に350台の戦車によって導かれた100,000の軍隊がちっぽけなペルシャ湾首長国クウェートを侵略しそして支配し、その政府を転覆させ、傀儡政権を置き換えた。200万人の人口と20,300人の軍隊を持つクウェートはとても1800万人の人口、100万人の戦争常習の軍隊、そして数100億ドルに相当する価値のソビエト軍の装備をもつイラクの競争相手ではなかった。

ニュージャージー州よりも小さいクウェートは世界の石油の蓄えの20%で頂上に位置している。そして8年間のイラン・イラク戦争(1981年から1989年まで)の間イラクの同盟国であった。フセインのイラク侵略の「述べられた」理由はクウェートとアラブ首長国連邦が彼らのOPEC割当量を超える石油を産出し、それによって石油価格を押し下げているということであった。クウェートの退位させられた指導者たちはフセインの目標はその地域全体を支配することであったと信じている。中東における最大のそして最も強力な軍隊をもってイラクはサウジアラビア、バーレーン、アラブ首長国連邦を侵略し、またペルシャ湾の石油の蓄えの大部分を支配する位置にある。これを書いている時点で、およそ170,000のイラク軍がサウジ国境に集められている。

中東の火山はここ数年にわたって爆発へ向かって動いていた。ソビエトの人間たちはは過去10年にわたって彼らの代理人であるリビア、シリア、イラク、イェメン、アフガニスタン、そしてPLOの手にほとんど800億ドルから1000億ドル相当の兵器をあらかじめ配備してきた。ソビエトのテロリスト代理者であるPLOはイスラエル占領地域(ゴラン高原、ガザ、そして西岸地域)における血みどろの反乱を始めた。そして最近数ヶ月でイスラエル市民に対するそのテロ攻撃を増加させた。イラクはイランおよび自国のクルド人たちに対して用いた、そして今やソビエトのミサイル弾頭を通じてイスラエルを標的した化学兵器の工場を発展させた。

イスラエルはもし脅威を受けていると感じるならば疑いなくそれを使用するであろう核兵器を所有している。そしてイラクは自分たち自身の核兵器を発展させるために熱心に働いている。一方、数万人の狂信的なテロリストを支配している数十のテロリストグループはリビア、シリア、イラク、イラン、レバノンのベルベク渓谷、そしてソビエト連邦においてイスラエル、西ヨーロッパそしてアメリカに対する攻撃のために訓練されている。イスラム過激派の炎によって扇動され、そしてソビエトKGBとGRUによって周到に準備されて、このテロリスト軍隊はサダム・フセインのイラク軍と同様に西側にとって危険である。

ペルシャ湾における現在の激動は脆弱な合衆国および世界経済(すでに景気後退に落ち込んでいる)、合衆国のインフレと利息率、石油および金の価格、そして合衆国および世界の株式市場にとって劇的な意味を持っている。明白なものは常に信用するな!ソビエト人たちは現在の危機において非常に潔白な傍観者であるように見える。しかし以下に論議されるであろうように、彼らは10年以上の間あの地域において主要な舞台裏の扇動者であってきたし、そしてこの10年の後半にはペルシャ湾石油地帯の支配のための彼ら自身の大きな計画を持っている。彼らは現在の激動に投資し、彼ら自身の行動予定表を進展させる方法を見つけるであろう。

A.サダム・フセインとは誰か?

最初それはカダフィ(Kadafy)であった。そして次にそれはホメイニ(Khomeini)であった。今や中東の最も危険な「狂人」はサダム・フセインである。農民の息子である彼は14歳でその最初の殺人を犯した。20歳で彼は当時地下組織であったバース党(Baath Party)に加わった。彼は当時のイラク支配者を暗殺しようと試みたが失敗してシリアに逃亡した。サダムは血みどろのクーデタの背後で実行者として1978年に権力に登り、1979年に政治の全権を掌握した。

フセインはアラブのヒットラーと呼ばれてきた。1980年に、イランが革命の混乱にあるのを見て、彼は争われていた水路と近くの油田を奪い取るために彼のより大きい隣国を攻撃した。これは100万人の死者、170万人の負傷者、そして150万人の亡命者として強制退去させられた人々を残した8年間の戦争へと導いた。フセインはイランにおける市街地へのミサイル攻撃とイラン軍および市民に対する毒ガス使用によって停戦を強制した。彼はまた彼自身の国民--反抗的なクルド人たち--にも毒ガスを用いた。サダムはイラクの1800万人の人々の上に彼の莫大な安全保障装置を通じてほとんど完全な支配を実行した。イラク指導部の内部集団はイラク北部のタクリットからの彼の拡大部族から、血統あるいは結婚によるサダムの親族で占められている。

フセインは過去10年にわたって彼自身の軍将校数百人を、7月には40人を、そしてごく最近では8月4日に、彼のクウェート侵略に同意しなかった120人を処刑した。彼は最近一人のイギリス人ジャーナリストを処刑した。そして彼はかつて彼に同意しなかった彼自身の内閣閣僚の一人を、閣議の間のある合間に、射殺した。

B.フセインのイラク軍はどれくらい強いか?

自分自身を終身大統領に指名したばかりのフセインは、自分がアラーによってアラブ世界の指導者たるべく命じられたと信じている。彼は従って中東における長距離ミサイル、化学兵器、戦車、戦闘機、そして他の兵器の最大の兵器庫を建造した。彼の兵器の大部分はソビエト製であるが、しかし西ドイツの雑誌Der Spiegel は最近西ドイツの十数社の会社がイラクがロケットおよび化学兵器を製造するのを助けた、そして軍事核工業技術獲得に際してバグダッドを援助したと報じた。100万人の軍人をもつイラクはペルシャ湾の6カ国の隣国全部の軍隊を合わせたよりも多い25万の部隊を持っている。イラクの軍事力はエジプトとイランの軍事力を合わせたものに匹敵する。そしてその敵対する西側の隣国シリアの軍事力の2倍以上である。

イラクは5500台の戦車(大部分ソビエト製)700機以上の軍用機、43隻を持つ海軍、軍用車、SAMミサイルそして長距離ミサイルの大きな兵器工場を持っている。クウェートにおいてフセインは275台の戦車、260台の装甲車、40機のヘリコプター、戦闘機の2飛行大隊(すなわち、34機のスカイホークスと32機のミラージュ)、8隻の艦船、多数のソビエト製SAM6,7,および8ミサイル、TOW対戦車ミサイル、そしてサイドワインダー・ミサイルを捕獲したばかりである。これらはすべて今はイラク兵器庫の一部となった。(イラクはまた金および外国通貨で40億ドルから50億ドル相当のクウェートの宝を奪った。)この論考を書いている時点でイラクはクウェート市から南へすでに進めた7師団に合流させるためにサウジアラビアに向けて18師団を送っている。侵略以来、フセインは新しい11師団のイラク軍編成を命じた。

C.現在の激動における諸々の危険

現在のペルシャ湾の激動における最大の危険はイラクがサウジ、アラブ首長国連邦、あるいはバーレーンの油田を攻撃するであろうということである。これらの油田を占領するかそれともあるいは爆破するかのいずれかによって、フセインは、イラクおよびクウェートの石油生産および備蓄(すなわち1日に500万バレル)と共に、世界のほとんど半分の石油生産を支配することができるだろう。もし彼が単純にこれらの油田を破壊し、そしてそれから撤退するならば、石油は1夜にして1バレル50ドルに急上昇し、石油供給は半減するであろう。そして工業化された世界は大規模な不況へと突入するであろう。イラクは今やクウェートにおけるそのミサイルをサウジの油田を標的とさせたのである。

この脅威に加えて、現在の危機を悪化させる、中東における多くの他の重大な危険が存在する。

1)その地域における大規模なソビエトの武装化--過去10年にわたってソビエトは大量の兵器を中東へ--その多くをその地域における将来のソビエト軍事作戦のためにあらかじめ配備しながら--引き渡してきた。その結果として、世界における大きな軍事常設編成20のうちの7つが中東にある。リビアには14のソビエト空軍基地--565機のソビエト軍用機が配備されている--があるが、これはイギリス、西ドイツあるいはフランスの空軍における航空機よりも多い数である。ソビエトは1600台の戦車および装甲車をリビアに配備したが、これもイギリス、フランスそして西ドイツの武装兵力を合わせたものよりも多い。リビアのようなわずか300万人の人口のちっぽけな国がなぜそのように巨大な隊列の軍備を必要とするのか?

ソビエトはシリアに210億ドル、イラクに200億ドル以上、アフガニスタンに200億ドルそしてイェメンに付加的な数10億ドル相当の兵器を配備した。「平和を愛する」ソビエトの人間たちはこの論考を書いている時点で1ヶ月当たり4億ドルの割合でアフガニスタンという同盟国へと流れて行くソビエト兵器を積んだ世界の歴史の中でも最大の軍事的空輸においてアフガニスタンへ40億ドル相当の兵器を過去12ヶ月にわたって送付した。

これらの武器を受け取っているこれらの国はソビエト連邦の代理国であり同盟国である。ソビエトの武器と共に訓練要員、顧問、KGB、そしてGRUが来るということは自明のことである。彼らはすべてこれらのアラブ諸国の各国のうちに異なった数で見られる。これらのソビエト兵器の大部分はゴルバチョフが権力の座に着いて以来、そして1985年に現在のグラスノスチ/ペレストロイカの時期が始まって以来中東に送られてきた。

2)イスラム過激派の勃興--1970年代後半にアヤトラ・ホメイニ(Ayatollah Khomeini)が権力の座に着くと共に始まって、中東はその地域を席捲し始めた一 つの過激な原理主義的イスラム運動--紀元700年以来初めてのそのような運動--の出現を見始めた。多くの教派--その中で最も過激なのはシーア派である--と共に、この運動そして中東における7億5千万のイスラム教徒の中の数百万の信徒は主要な教義の多くを共通に持っている。

a)彼らはマハディ(Mahdi)(彼らの救い主)の差し迫った帰還を期待している。

b)彼らは西欧、西欧文化、西欧人そして特にアメリカ人とアメリカとを憎む。(彼らはそれらを大きなサタンであると信じている。)

c)彼らはその地域の退廃的な準西欧化したアラブの諸政府をホメイニの下でのイランにおけるように、原理主義的なイスラム神権政治と置き換えたいと望んでいる。

d)彼らは死ぬ前に彼らの三つの聖なる都市:メッカ、メディナそしてエルサレムにおいて礼拝することを望んでいる。

e)イスラエルとイスラエル人たちは絶滅されなければならない。そしてパレスチナは彼らの「悪」から潔められなければならない。

f)異教徒(原理主義的イスラム信者でない者はだれでも)は悪い者であり、撲滅されなければならない。異教徒を殺している間に死ぬ者は彼らのイスラムの天国における一つの場所を「保障する」、そしてイスラム原理主義過激派によって歓迎される。

今日、パリ日刊新聞「フィガロ」が報じているように、「大衆はイスラム過激派の方向へと転じつつある。エジプトにおけるイスラム教徒とキリスト教徒との衝突、イスラム救国戦線の台頭、イスラエル占領地域におけるハマス運動の活発さ、ヨルダンの大学選挙におけるイスラム教兄弟団(the Moslem Brotherhood)の勝利、これらはみなアラブ人たちにおけるイスラム過激派へと引きつける力の増大を証言している。われわれは民族主義者たちとイスラム主義者たちとの間の時間との競争を見ており、そして後者が勝利しているのを見ているのである。」

単に西ヨーロッパにおいて一つの巨大なイスラム過激派の運動が増大している(数千万の数)ばかりでなく、この運動は間もなく世界の石油供給の50%から60%、そして洗練された近代兵器の800億ドルから1000億ドルを支配することができるであろう。現代世界のすべての「悪」を滅ぼし、カレンダーを1000年逆戻りさせることは彼らの行動予定表の一番上にある。

3)新しい人質危機--アメリカは過去12年にわたってさまざまの時に5人から10人、50人までの合衆国人質を取ったイスラム教過激派の前にすくんできた。少数の者は監禁状態において亡くなった。1人(合衆国海軍少佐)は処刑された。一方、過激なイスラム教テロリストたちは強力な合衆国とその指導者たちを跪かせた。今、サダム・フセイン、彼の戦時の同盟国クウェートを裏切って陥れ、100万人以上の死を統轄した一人の男、は3060人の合衆国人質--500人をイラクで、2560人をクウェートで--を取っている。それはアメリカに対する影響力における最後のものと呼ばれている。フセインはまたクウェートにおいて捕らえられた35人のイギリス軍要員と、侵略の間にイギリス航空ジャンボジェット機が367人の乗客を乗せてクウェートにおいて立ち往生させられた後に捕らえられた60人のアメリカ人を拘束した。

D.石油戦争

7月初めに、サダム・フセインはクウェートとアラブ首長国連邦に、彼らの石油生産を削減するように告げる書簡を送った。両国はOPECによって彼らに割り当てられた量をいつものように超過していた。(割当量は1日につきそれぞれ150万バレルと110万バレルであった。そして両国はこの年の大部分、1日につき200万バレルを汲み上げていた。このことは1バレル当たりの石油平均価格を1月初めの20.50ドルから6月に13.60ドルまで引き下げることに役立った。)

クウェートおよびアラブ首長国連邦に警告を手渡ししたイラクの首相代理は、これらの「提案された」生産削減の目標は石油価格を1バレル14ドルから1バレル25ドルに上げることだと言った。フセインはクウェートとアラブ首長国連邦とを、「世界石油市場を満腹にさせ、そして石油価格を低く抑え、イラク経済を破産させるために合衆国と共謀することによってイラクの背中を毒を塗った短剣で刺す」として非難した。

フセインは過剰生産によって引き起こされるより低い石油価格は、外債が500億ドル以上であるイラク--失われる歳入140億ドル以上--を犠牲にしたと判断している。イラクはまたクウェートを過去10年の間石油を盗んだ罪で告発した。そしてクウェートが両国の国境にまたがっている油田から汲み上げたと申し立てられている石油を24億ドル分補償するよう要求した。フセインはまたクウェートがイラン/イラク戦争の間の財政支援としてイラクがクウェートに負っている巨額の負債(100億ドル以上)を免除するよう要求している。

1日につき314万バレルの石油産出と共に、イラクはOPECの2番目に大きな産出国の地位のためにイランと結ばれている。両国はサウジアラビアの1日につき542万バレルの産出の後を追っている。もしイラクが世界石油の蓄えの20%を持つクウェートを吸収するならば、イラクはOPECナンバーツーの産出国になるだろう。イラクは石油1バレルの価格における1ドルの下落が1年に失われる歳入において10億ドルの犠牲であると見積もっている。それゆえ昨年秋以来の10ドルの下落はイラクにほとんど100億ドルの犠牲である。先の7月にOPECはその頭に銃を突きつけられて、過剰産出を中断させ、カルテル達成価格を1バレル18ドルから2 1ドルに上げることに同意した。しかしながら、それは「OPECの無礼な石油強要者」として知られるようになったフセインにとっては十分ではなかった。イラクの目標は石油価格を1バレル25ドルに上げ、そこに維持することである!彼のクウェート侵略は短期的にその目標を達成した。そして長期的にもそれを達成するであろう。

E.イラクに対する報復の選択肢

合衆国は合衆国におけるイラク資産を凍結し、世界の残りの部分にイラク石油をボイコットさせるように動き、トルコにその国を貫通している石油パイプラインを閉じさせるように動いた。イラクに反対する国際的な承認を迫り、イラクの海上封鎖を迫っている。サウジアラビアに合衆国軍隊駐留を許可させるのに数日を要した。サウジにとっては、彼らの国に合衆国軍隊を持つことはメンツの喪失、恥のしるし、そして彼らのイスラム法典違反である。しかしイラク軍、戦車、ミサイル、そして化学兵器が彼らの国境に集結しているのを見た後にサウジの人々はアメリカ人が二つの悪のうちのよりすくない方であると結論した。

アメリカは期待されているよりは成功しそうにない軍事的選択肢を選んだ。イラクが100万人の世界で最も経験を積んだ、戦場で鍛えられた軍隊(イランとの8年の戦争の後で)を持っており、彼らは砂漠での戦争に慣れていて、彼ら自身のなわばりで--われわれのなわばりでではなく--戦っているということは記憶されておくべきであろう。イラクはこの論考を書いている時点ですでにクウェート内部でその軍隊をイラクの内部で動員されるより多くの部隊と共に、17万人に増強していた。イラクは今クウェートの内部に500台の戦車を持っていて、さらに300台をその途上にしている。大量の化学兵器はサウジの国境までクウェートの中へと移動させられ、そして毒ガスはイラクにある戦闘機に搭載されるのが見られた。フセインはまたそのトルコとの北部国境線に沿って、彼の北部方面を守備するために軍隊を配置につかせている。イラクと戦争することは、アメリカがグレナダにおける数百人のキューバ軍、あるいはパナマにいる12,000人のノリエガの国民衛兵と渡り合ったときにやったような、その結果が最初からはっきりと分かっている週末の遠出ではないであろう。

この危機が勃発したとき、アメリカは実際に中東には非常にわずかしか軍隊を駐留させていなかった。そして世界中にいる大多数の部隊を移動させることは時間の浪費であり、困難な仕事である。ペンタゴンは湾岸地域に重装備の(装甲あるいは機械化)2個師団の軍隊を配置するためには1ヶ月近くかかるであろうと言った(イラクはすでに決まった場所にそして戦闘準備の整った25個師団を持っていた)。海軍遠征旅団(Marine Expeditionary Brigade)(その数は約16,000人の軍隊)のようなより小さな軍隊は約1週間で(部隊とその装備の移動を含めて)派遣され得るであろう。しかしそのような部隊はイラクの大きな戦場で試された軍隊の競争相手ではないであろう。ブッシュ政権は現在その地域への25万人の合衆国軍隊の移動について話し合っている。

アメリカの(そしてその同盟国の)軍事的選択肢は次のようなものである:

1)特殊部隊攻撃班(すなわち、デルタ・フォースあるいはネイヴィー・シールズ)でもってサダム自身を取り除く試み、あるいは数年前にアメリカがカダフィに対して試みた(それは失敗した)ような攻撃目標を特定した空からの攻撃。ここでの成功の見込みは非常に低い。というのは、フセインは非常によく守られている。そしてカダフィのように、非常に動き回るからである。

2)製油所、パイプライン、発電所のようなイラクにおける経済的にきわめて重要な標的、並びにイラク軍事施設に対する空爆。もしサダムがサウジアラビアあるいはイスラエルをミサイルで攻撃することによって、あるいはサウジ/湾岸油田地帯あるいは製油所に火をつけようと試みることによって、賭け金をつり上げたならば、あるは合衆国の人質を殺し始めたならば、戦術核兵器あるいはニュートロン兵器がイラクに対して用いられ得るであろう。

3)もしフセインが侵略すれば、クウェートあるいはサウジアラビアにおけるイラク軍に対する、あるいはイラクの供給ラインに対する空爆。クウェート内部での空爆はクウェート人の生命の広範な損失を予防するための外科的なものでなければならないであろう。不幸にしてイラクは今クウェート人全体を人質に取っている。

4)合衆国軍隊を用いる地上作戦。これはイラクがすでに決まった場所に持っている通常兵力の優勢のゆえに非常に困難な選択肢である。[イラク軍の]数が非常に勝っている(豊富な合衆国空軍の支援をもってするとしても)のに、多かれ少なかれ彼ら自身のなわばりで(すなわち、砂漠の中で)イラクと戦うこと、は数千人(おそらく数万人)のアメリカ人の生命を犠牲にするであろう。

トマス・ムーラー(鷹)大将そして合衆国軍戦略家たちはイラクとの地上接近戦は、相対的な軍隊の強さ、兵站術および軍事上の地勢があるとしても、アメリカにとっては勝ち目のない計画であろうと考えている。もし紛争がエスカレートするならば、合衆国空軍力の決定的な使用がその時点でのアメリカの最善の軍事的選択肢であると思われる。

フセインが態度を軟化させクウェートから撤退しないかぎり、数週間以内にアメリカはその地域に10万人以上の軍隊(および毒ガスマスクを含む関連する装備)、10数隻の艦船(アイゼンハワー、インデペンデンスおよびサラトガ空母艦隊を含む)そして数百機の航空機を派遣するであろう。第82および第101空輸部隊とさまざまの州兵団が同様に召集されるはずである。サウジアラビアへのイラク侵攻を合衆国空軍力(数百機の対地攻撃ヘリコプター・ガンシップを含む)で阻止することが成し遂げられ得る。クウェートからフセインを吹き飛ばすことは別の問題である--そしてもし彼が踏ん張る決意をするならば、遙かに困難である。

トルコはイラクの北への石油パイプラインを切断した。そしてこの論考を書いている時点で合衆国海軍はペルシャ湾経由でイラクを出るすべての石油を封鎖した。イラクへの食料積み込みの遮断を含む全貿易出入港禁止は約90日以内にその国を屈服させ始めることができるであろう。もちろん、リビア、ヨルダン、イェメン、P. L. O.そして東ブロックの諸国は出入港禁止を破るのを助けると期待され得る。長期の合衆国のペルシャ湾、地中海における海上封鎖、引き続いてのトルコの石油パイプライン切断の態度は6ヶ月から12ヶ月にわたってイラクを徐々に経済的な死へ向かって窒息させることができるであろう。

フセインは2枚のワイルド・カードを持っている:1)サウジの油田を破壊するミサイル攻撃;2)彼が1人、2人、5人、10人、あるいは100人を一度に殺し始めることができる3,560人のアメリカ人人質。

F.イスラエル要因

誰もイスラエル軍を意気地なしとは考えない。141,000の現役軍隊、500,000の予備兵役、3,850台の戦車、575機のコンバット戦闘機、ハイテク空対空、空対地、地対空ミサイル、核兵器を持ったイスラエルはすぐれた防衛力を備えており、明らかに生き残るための強い意志を持っている。元国防長官アリエル・シャロン(Ariel Sharon)は最近フセインに対するある直接でない警告の中でこう言った:「イスラエルはクウェートではない。」それにもかかわらず、イスラエルは常にイラクがその最大の脅威であると考えてきた。イラクは1980年と1981年にオシラク(Osirak)で(おそらくイスラエルに対する使用のために)核兵器を組み立てていた。そしてイスラエルは1981年に先制攻撃でそれらを破壊した。

サダム・フセインの夢はイスラエルを滅ぼすアラブの指導者であることである。化学弾頭で武装され、イスラエルを標的にした彼の新しい長距離ミサイルと、彼が3年から5年以内に建造しようと望んでいる核兵器はイスラエルの滅亡を意味している。そしてイスラエル人たちはそのことを知っている。「イスラエルの半分を毒ガスで焦がす」というフセインの脅迫以来、イスラエル政府は防毒マスクをその市民たちならびにすべての軍人に支給し始めた。このように、来年かそこらあたりのイラクに対するイスラエルの先制攻撃というのは一つの増大する可能性である。

G.ソビエト・コネクション

筆者の親しい友人ビル・リチャードソン(Bill Richardson)上院議員(共和党--カリフォルニア)はイラクにおけるソビエトの親密な関わりを次のように記述した:

ブッシュ大統領の武力による威嚇にもかかわらず、イラクがクウェートを出て行く見込みはまったくない。彼らは、ブッシュが彼のしぶとい抵抗を妥協させて解決するであろうという知識に落ち着いて、われわれをしのぎ通すであろう...彼らはそうすることは彼の本性であると信じている。彼らはまたブッシュ政権のソビエト連邦に対するご機嫌取りの政策を理解している。

イラク軍に対する全面的軍事作戦の見込みは、実際合衆国国務省にとって、それがソビエトに非友好的な印象を引き起こすであろうから、「考えられない」ものである。イラク政府は1972年以来ソビエトとの友好条約を結んでいた。そしてしっかりと共産主義圏の中にいる。本質においてUSSRはイラクを助けるために軍事的にコミットしているのである。

ソビエトは、1987年の書物Our Globe Under Seige IIIにおけるロバート・モリス(Robert Morris)によれば、イラクに8つの軍事施設を持っている。モリスは数年前にこれらの施設の以下の一覧を挙げた特約寄稿者ポール・スコット(Paul Scott)を引用した。

1)ペルシャ湾に注ぐシャート・エル・アラブ(Shaat-el Arab)河口のウム・カスル(Umn Qasr)にある主要海軍施設。この基地は艦船のための整備施設と装備および弾薬の貯蔵庫を含んでいる。またそこには基地から海兵隊を輸送することができるホバークラフトのためのタラップもある。

2)ズビオル(Zubior)およびアル・クルナ(al Qurnah)の海軍の基地および施設。前者はユーフラテス河下流、後者はティグリス河にある。両港はソビエトの軍艦の点検・整備ができる。

3)国の北部中心地域の北東モスルにあるスライマニヤ(Sulaymaniyah)には空軍基地がある。

モリスはさらに続けて、イラン/イラク戦争の開始のときに、西側諜報機関および軍事当局者たちが、どのように広範にイラクがイラン軍を縛りつけようと意図したか、そのようにしてテヘラン政権の分解を手助けし--ソビエトの乗っ取りのための道を開いたか--を信じたかを記述している。1985/86年までにイラクには1000名のソビエト軍事顧問がいた。そして1987年の国防報告書はバグダッドへのこの武器供給は今日まで継続している、800人から900人の間のソビエト顧問が今なおイラクにとどまっている、と述べている。

イラクは共産圏ブロックから他のいかなる第三世界の国よりも多くの軍備を受け取ったと合衆国国防省は言っている。1985/86年には彼らは35億ドル以上の軍事援助を受け取った。1979年にはフセインとソビエト国防大臣ユスティノフ(Ustinoc)は軍事協力および戦略的協議に関する協定に調印した...そのことを理解しなさい、戦略的協議!!!

リチャードソンは、ソビエトが[イラクの]侵略について、それが起こる前に、知らされていた、それを計画するのを助け、それについて是認したことはほとんど疑いないと続けた。もしそれがゴルバチョフによって是認されていなかったならば、共産主義の傀儡サダム・フセインがクウェートを侵略するよう命令を与えたなどということは決してない。

ソビエトのイラク「非難」はクレムリンにおけるまったくのばか笑いを産み出したに違いない。彼らが、西側は思うままに言葉巧みに欺かれ得る、そしてわれわれは朝になってもなお彼らを愛しているだろうと信じていることは明らかである。クウェートの攻略は常に共産主義者の行動予定表に載っていた。そして今あの小さな石油でいっぱいの宝石は...言ってみれば...共産主義陣営の中にあるのだ。

われわれは古典的な共産主義の戦術が実施中であるのを目撃している。一つの西側寄りの国を侵略するために一つの共通の国境を使うこと、サウジアラビアで断固とした抵抗に会うまでは前進すること。イラク人たちは次にサウジの人々を攻撃することから手を引くことによって「妥協する」であろう。これは2歩前進、1歩後退の古典的シナリオである。正確にこの通りには働かないであろうが、しかし近いであろう。

アメリカ軍がクウェートに侵攻することは非常にありそうもないことである。出会うであろう諸々の困難を見るためには一枚の地図をぜひ見ればよい。サウジの人々は彼らの空軍基地をわれわれの空軍が使用するのを許可することを大いに喜んではいない。ましてアラブの隣国を攻撃するために遠征軍を許可することを喜んではいない。サウジアラビアを防衛することは許されるであろう。しかしあなたよりも10倍も数が多い敵に対する攻撃のために地域から飛行機を飛び立たせることに奉仕することは悪しき兵站学である。もしわれわれがそうしたら、あなたはこの国において強硬な左翼が巻き起こすであろう非常に不愉快な悪臭[騒動]を想像することができるか? 反戦運動家たち、マルキシストの大学教授たちそして騙され易い学生たちは金切り声を挙げるであろう。「なぜわれわれの青年たちはターバンを巻いた族長たちの財産と合衆国の石油利益を守るために死ななければならないのか?」メディアは彼らにゴールデンアワーの注目を与えるであろう。

時はイラクの味方になっている。遅かれ早かれ西側諸国はフセイン大統領およびクウェートの新しい革命政府と「交渉し」始めるであろう。ゴルバチョフは一つの中立的な仲介者として行動することを申し出ることさえするかもしれない。そして国防長官ジェームズ・ベイカーはそれはよい考えだと考えるであろう。ブッシュ大統領はすべての者を交渉のテーブルにつかせた栄誉を受け、論争を解決するものとしての承認を保証するであろう。もう一度石油はクウェートから流れ出るであろう...しかし利益はそのとき、ちょうどそのことがアンゴラにおいてそうであるように、共産主義者たちのポケットの中に入るだろう。皆が幸福であろう...共産主義者たちが一歩アメリカに近づいたということを知るに十分利口であるクウェート人とアメリカ人を除いてすべての者が...

主要な敵はイラクではない...それはソビエト連邦である。もしあなたが綿密に見るならば、クウェートのすべての死体にマキアヴェリ的共産主義者の指紋を見るであろう。

H.イラク侵略の経済的意味

先月あたりの中東の出来事は世界的な石油価格を急激に上昇させた(すなわち、13.60ドルから28.13ドルへ、そして26.00ドルへと戻る、中間に急激で猛烈な変動幅を伴った)。フセインは少なくとも一時的には1バレル石油25.00ドルという彼の目標を達成した。1970年代初期以来第三の大きな石油価格ショックにもしかすると直面して、現在景気後退(あるいはもっと悪いこと)へと沈み込んでいる脆弱な合衆国および世界経済に及ぼす衝撃波は劇的であり得よう。諸要因のいくつかは:

1)危機の前にすでに最高値であると思われた合衆国株式市場は以来200ポイント下落した。石油および金の株はもちろん例外で、侵略に引き続いて急激に上昇した。日本の、そして他の株式市場も急激に下落した。

.2)USSRは世界最大の石油生産国であり、昨年その通貨収入の40%(すなわち180億ドル)を石油から受け取っている。元レーガン国家安全保障委員会経済部会会長、ロジャー・ロビンソン(Roger Robinson)によれば、石油価格におけるドル増加は付加的外国為替において10億ドルに相当する。金のより一層の高価格もまたソビエトの外国為替収入に実質的に加えるであろう。

3)外国石油に50%の依存をしており、その半分をペルシャ湾からの石油に依存しているアメリカはペルシャ湾油田の破壊に非常に傷つき易い。サウジあるいはアラブ首長国連邦油田のイラクによる破壊はアメリカを一夜にして景気後退へと追い込むであろう。そして事態をもっと悪化させることには、合衆国の国内石油産業は両手両足切断者の状態である--合衆国石油生産における増加を上向きに変えるためには5年と新税刺激を要するであろう。

結論

ジョージ・ブッシュと自由東方体制が「平和がいたるところで勃発している」と宣言し始めた、そしてリベラルな合衆国議会が合衆国国防支出における大規模な削減をし始めた、そして連邦議会議員パトリシア・シュレーダー(Patricia Schroeder)がすべてのアメリカ外国軍事基地閉鎖、そしてわれわれの軍隊のすべてを帰国させる議案を提出した、ちょうどそのときに--最も奇妙なことが起こった--戦争がペルシャ湾で勃発したのだ。

リベラルな軍縮論者たちは、サダム・フセインのイスラム軍隊と彼らの200億ドル相当のソビエト兵器に対して何をわれわれが使うべきだと正確には考えているのか? イラク軍のクウェート侵略はthe House Armed Services CommiteeがB-2ステルス爆撃機を葬り、SDIをやめ、合衆国軍隊を129,000人にまで削減する--240億ドル叩き切り--ことを票決する合衆国国防予算案を寸断したちょうど24時間後にやって来た。

世界中で合衆国は基地を閉鎖し、軍隊の水準を引き下げ、武器を除去し始めた。もしこのことが続くならば、それは戦争のための舞台を設定するであろう。フセインがクウェートを侵略したとき、アメリカはペルシャ湾にわずか6隻の海軍艦船しか持っていなかった。その地域には基地はなく、わずかの兵器はあるが、軍隊はいなかった。もし2個師団を召集するために30日を要するとするならば、もしソビエトが(合衆国に対する彼らの巨大な軍事的優勢を持った)1990年代の終わりにブレジネフがそうすると約束し、筆者も彼らがそうするであろうと信じているように、ペルシャ湾油田地帯に対して動いたならば、何が起こったであろうか? その答は、アメリカがわれわれの緊急配備軍(Rapid Deployment Force)の最初の分遣隊を緊急配備している間に彼らは中東を征服しているであろう、ということである。

アメリカがもはやその基地をフィリピンに、あるいは韓国に持っていなくて、共産主義者たちが南シナ海を通じて重要な輸送ラインを切断するために動き、あるいは北朝鮮が韓国を侵略するならば、何が起こるか? アメリカは、われわれがクウェートにおいて現在までそうであったように、出来事に影響を与えるには、あるいはわれわれ自身の利益を守るには無力だということになろう。たとえロシア人たちや中国人たちが善玉になった(そして彼らはそうならなかった)としても、そして共産主義が死んだ(そしてそれは死ななかった)としても、なお、アメリカの利益に深く敵対的である6つの地域的権力がある(ジョージ・ブッシュによる今度の25%削減の前に--アメリカの現在の軍隊の25%から50%のサイズの軍隊を各国が持っている):それらは北朝鮮、ベトナム、イラン、イラク、シリアそしてキューバである。

合衆国/ソビエト「パートナーシップ」および「合併」の代弁者ブッシュ政権は一つの解決策を見つけるために合衆国とソビエトの「協力」によるイラクの共同非難声明について、そしておそらくアメリカとロシアの間の「新しい石油パートナーシップ」について、話し合いを始めている。それによってわれわれはわれわれの石油会社を石油掘削および生産のためにロシアに送り、そしてアメリカ人たちはそのロシアの石油を消費するために得る。--彼らはそれをナンバーワン石油生産者とナンバーワン石油消費者との間の「自然的パートナーシップ」と呼んでいる。(レーニンが彼らをそう呼んだように)これらのリベラルな「役に立つばか者たち」によって忘れられていることは、ペルシャ湾油田が今日、われわれの「新しいパートナー」によって武装され訓練されたイスラム過激派の手の中にある数十億ドルの値段のソビエト製兵器によって脅かされているという事実である。ソビエト共産主義は他の国を倒すために援助したのであり、ペルシャ湾岸に堅固なのろま(blockhead)を確立したのである。

その間にサダム・フセインとペルシャ湾油田を見守りなさい。当面の危機は明滅して消え失せることもあり得よう。あるいはそれは中東の火事嵐にも転じ得よう。時限爆弾がカチカチ音を立てている!紙面が足りないために、いくつかのパラグラフはこのリプリントから編集で除かれた。この完全なテキストのコピーは要求する人には入手可能である。

2004/02/17 三上 茂 試訳

作成日:2004/02/17

最終更新日:2005/03/22

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