ファチマの聖母マリア

世界の奴隷化か、それとも平和か...
それは教皇にかかっている

第 X 部

ニコラス・グルーナー神父と他のファチマ専門家たち

ブルー・アーミー指導層はファチマ・メッセージを
曲げて伝えるある意図的な政策に従ってきた

Father Paul Leonard 著

すでにその1973年7月/8月号において、Soul[Magazine]はロシアの奉献が第二バチカン公会議で達成されたと示唆している。公会議第三セッションで1964年11月21日の教皇パウロ六世の言葉は Soul[Magazine]の主張が事実に反するものであることを証明している。教皇パウロはこう宣言された。「...われわれの一瞥は全世界の果てしない地平へと開いている...その世界をわれわれの記憶にある尊敬すべき先任者ピオ十二世は...マリアの汚れなき御心に荘厳に奉献された。今日、われわれはこの奉献の行為を更新することが特に時宜に適っていると考える。」

明らかに、その奉献はファチマの聖母の要求を満たさなかった。なぜなら、聖母はロシアをその対象として具体的に明示する奉献を要求なさったからである。

1982年5月13日に、教皇ヨハネ・パウロ二世はマリアの汚れなき御心に世界を奉献された。そしてその1982年7月/8月号において、Soul[Magazine]は、ファチマ・クルーセイダーがその第20号において粗雑な悪ふざけとして暴露したシスター・ルチアとのインチキのインタビューを公表した。そのそうだと主張されたインタビューにおいて、シスター・ルチアはこう尋ねられたと主張された:「世界の司教たちと一致して教皇によって為されたものとしてのこの奉献は -- 1929年6月13日の御出現によれば -- われらの主と聖母が要求しておられるものだったか?」そうだと主張された答:「はい、そうです...それはその効力を持っています。しかしそれはこの奉献に対する人々の忠誠が多いか少ないかによるでしょう...」

このテキストはインチキの悪ふざけである。われわれはこのことを、1983年3月19日に、シスター・ルチアが教皇使節ポルタルピ大司教への彼女の公式の陳述において次のように宣言したがゆえに、知っている:「ロシアの奉献は聖母が要求なさったようには為されませんでした。」

シスター・ルチアは1982年5月13日の奉献に関して彼女の公式の宣言を出し、Soul のインタビューが明らかな捏造であるということを間違えようのない仕方で明らかにした。にもかかわらず、Soul はそれを撤回しなかった。反対に、Soul の1983年5月/6月号においてわれわれはこう読む:「シスター・ルチアは奉献は為された、そしてそれはその効力をもったであろうと言った...それは効力を持つであろう。しかしその効力の程度は奉献に対する世界の反応に依存するであろう...」

さらに1984年5月/6月号においてわれわれはこう読む:「1982年5月13日の奉献の後に、シスター・ルチアはまた実際、ロシアが含まれていたと言った。」これは、John Haffert が1982年に公表した同一のインチキのインタビューへのもう一つの関連である。その中ではシスター・ルチアによれば、「教皇様は全世界を奉献されました。そしてロシアは[その中に]含まれています。そして教皇様はこの奉献を最も必要としている国々に言及なさったときに、ロシアのことを言っておられたのです。」ということが詐欺的に主張されている。シスター・ルチアが教皇使節に読み上げたテキストにおいては、彼女はロシアの奉献は果たされなかった、なぜならロシアははっきりと奉献の対象ではなかったからであり、また各々の司教が彼自身の司教座聖堂においてロシア奉献の公的、荘厳な儀式を取り決めなかったからである、と述べた。

Soul Magazine がこの1982年5月のこのインチキのインタビューが偽物であると証明された後にさえそれを引用し続けているという事実は、われわれが単なる見過ごしあるいは誠実な誤りを扱っているのではなく、むしろその組織が意図的に犯した詐欺行為の罪あるものであるという事実を証明している。

さらに、ファチマ・クルーセイダーはインチキのインタビューに関する暴露記事を公表した。にもかかわらず、Soul はなおそれを撤回しなかった。編集者はこのまさに重大な問題において説明しあるいは自らを擁護するいかなる試みをもまだしていない。

ファチマ・クルーセイダーが、ブルー・アーミー指導者たちが困惑したことに、ファチマの聖母によって要求されたロシアの奉献が為されなかったということを証明した諸々の文書や論考を繰り返し公表して以来、Soul Magazine は、修正を受け容れる代わりに、彼らの不条理な立場を修正し、もう一つの等しく不誠実な立場:すなわち、ロシアの奉献は為された、しかし、不完全な仕方で[為されたのだという]立場、を取り始めた。

Soul Magazine(1983年5月/6月)は二つの段階において達成される奉献について話し始めた:「ロシアの奉献の第一のそして最も重要な段階は今や為された...」そして「第二の段階がどのように直ぐに行われるかということは教皇と司教たちにかかっている...」私はすでにファチマ・クルーセイダー、第20号(『聖母を沈黙させる陰謀』)*において「第一段階」と「第二段階」についてのこのすべてのナンセンスは単に Soul Magazin 編集者たちの発明にすぎないということを指摘した。なぜなら、諸段階によって達成される一つの奉献という考え方はシスター・ルチアの言葉そして一つの時期に達成される一つの行為を特定なさった聖母御自身の言葉と一致しないからである。このことはわれわれがシスター・ルチアの回想録のうちに読むことである。それは、「教皇」と「各々彼自身の司教座聖堂において、そして...教皇と同じ時間にカトリッ世界のすべての司教たちによって[行われる]ロシアの奉献の一つの公的、荘厳な行為」である。

この書物の p. 368 以下、特に p. 373-376 を見よ。

「奉献の第一のそして最も重要な段階」がすでに為されたという偽りの印象を創り出すであろう欺瞞を永続化するために、Soul(1986年3月/4月)は、器用に最も重要な部分を欠落させて、ポルタルピ大司教に対するシスター・ルチアの陳述の一部を公表した。p. 9 に、われわれはこう読む:「1983年3月19日に、彼女は彼に教皇ヨハネ・パウロ二世の奉献はピオ十二世の奉献と同じように、それが世界のすべての司教たちと共に、各々が同じ日に一つの奉献の『共同的』行為において[為されたもの]ではなかったので、聖母の要求に従っていなかったと、告げた。」しかしながら、シスター・ルチアはまた、1983年3月19日インタビューでロシアの奉献はロシアがはっきりとその奉献の対象ではなかったがゆえに達成されなかったと公式に述べた。

聖母がロシアを奉献されるべき特定の対象として具体的に挙げられたという事実にもかかわらず、そしてシスター・ルチアが要求された奉献はまさにロシアが具体的に挙げられなかったという理由のために為されなかったと宣言したという事実にもかかわらず、Soul Magazine は、このようにこれまでヨハネ・パウロ二世によって為された奉献がなぜ聖母の要求を満たしていないのか、その理由の一つが、ロシアが明らかに現教皇によって為された諸々の奉献の対象ではなかったということであるということを認めるのを拒否する。Soul によれば、欠けている唯一の事柄は奉献の共同性であった。

ファチマ・クルーセイダーは、ロシアが奉献の特に明示された対象でなければならないということを議論の余地なく証明するシスター・ルチアの陳述と聖母御自身の陳述を繰り返し印刷してきた。しかし Soul の編集者たちはこの真理を意図的に無視することを選んできた。そして現在彼らは、ロシアが明白にそして特に奉献の対象でなければならないということを認めることをまだ拒否している。

ロシアが世界の奉献の中に含まれているという事実は関係のないことである。なぜなら、聖母は特に「ロシア」の奉献を要求なさったからである。カトリックの道徳神学の教えに従えば、もしある人が一人の司祭にある特定の意向(ロシアの回心)のためにミサの謝礼をするならば、その司祭はその特定の意向のためにミサを捧げなければ、その意向を正当なやり方で果たしていない。もし彼がミサを世界の回心のために捧げるならば、そのとき彼は具体的に明示された意向のために再びミサを捧げる厳密な義務を負っている。

同じように、同一の神学的原理に従えば、もし神が教皇と司教たちにロシアを奉献するように命令されるならば、彼らは、ロシアを特に、そして名を挙げてはっきりと奉献しない限りその命令を果たしていないのである。それゆえに世界の奉献はその命令を正しいやり方で果たしていないのである。

ブルー・アーミーの指導者たちはロシア/世界問題をファチマの聖母の言葉を変造することによって解決しようと試みてきた。Soul の1986年3月/4月号の p. 9 でわれわれは聖母の直接的な引用を読む。その中ではロシアという言葉は世界に変えられた:「私は私の汚れなき御心への世界の奉献を求めるでしょう...」。p. 22 ではわれわれは教皇ヨハネ・パウロ二世の世界の奉献が聖母の要求を満たしたということを読む!

われわれはそこに、「教皇は世界のすべての司教たちと一致して1929年6月13日の御出現において要求されたようにマリアの汚れなき御心への奉献をされた」ということを読む。

ロシアから世界への聖母の言葉の変更は Soul の編集者たちが永続化させた聖母のメッセージの唯一の変造ではない。Soul の1982年7月/8月号において、ジョン・ハッファートは「ロシアに対する奉献の正確な効果は1929年6月13日の御出現において聖母御自身によって予告された。そのとき、聖母は、神が今『この手段によってロシアを救うと約束なさりながら』ロシアのこの奉献を望んでおられると言われた。」そこまでは非常によい。なぜなら、聖母は、その奉献がそれによってロシアが回心する手段になるという無条件の約束をなさったからである。しかしながら、ブルー・アーミー・リーダーの1984年版においてはこう書いてある:「われわれは今や奉献の行為はそれ自体『ロシアを回心させ』ないのであって、ロシアの回心の行為の達成の舞台を創るあるいはそのための準備をするであろうと理解している。」

このようにブルー・アーミー指導部は、ロシアの奉献が手段であるでしょうという聖母の言葉において聖母をもはや受け入れないで、単なる一つのしるしとして: -- すなわち、「それによってわれわれが、ロシアは回心するべきである、そして世界における悪の潮流が逆にされるべきであるということを知る一つのしるし」として受け入れるのである。これは絶対的に途方もないことである。聖母は1917年にすでに、ロシアが回心し、世界における悪の潮流が逆にされるべきであるとわれわれに告げられた。聖母は、ロシアの奉献は一つのしるしであるとは言われなかったのであって、それによってロシアが回心する手段であると言われた。ブルー・アーミー指導者たちが、聖母御自身の約束を否定するそのようなまったくのたわごとを印刷することによってどのように自分たち自身の名誉を汚すのか、は私にはまったく理解できない。

聖書は二枚舌の実行者たちに対して一つの呪いの言葉を宣告している:「光の場所に暗闇を、真理の場所に偽りを置く人々に呪いあれ」(イザヤ)。それは神の見るところでは憎むべきことである:「私は二心を持つ者たちを憎んだ」(詩編)。ブルー・アーミー指導者たちの嘘の偽善は弁護の余地のないもの、弁解できないものである。しかしそれは、そのための理由がないということを言っているのではない。

バチカン・モスクワ協定の基づいた諸政策

バチカン・モスクワ協定は第二バチカン公会議の教父たちにロシアと共産主義について沈黙の義務を負わせた。この協定は、バチカンと共産主義諸政権との間の関係におけるデタントを口実にして、歴代の教皇たちによる共産主義に関するカトリック教会の不可謬的な非難を再主張することはおろか議論することさえ公会議に禁じた。注1)

共産主義諸政権とのその交渉と関係におけるバチカンの諸政策のための基礎として奉仕している現在の東方政策の立案者はバチカン国務省長官カザロリ枢機卿である。カザロリ枢機卿がそれらの共産主義諸国における教会と国家との関係を確立し発展させる際に従ってきた諸政策はバチカン・モスクワ協定に基づけられてきた。教会はソビエト・ブロックにおいては、教会が共産主義に批判的な声明や宣告をしないという条件で存在することを許されている。カザロリ枢機卿のこの政策はよく知られた、異議のない事実である。

国務省長官として全バチカン外交団の長の地位にあるカザロリ枢機卿は今なおバチカン・モスクワ協定に固着している。彼は最近、1984年9月3日にラッツィンガー枢機卿によって発せられた解放神学に関する教えの反共産主義的な内容に対して自分は何ら責任がないということを明らかにしたとき、このことを証明した。そして彼はその教えについて相談されたことさえ否定した。(ファチマ・クルーセイダー、第18号、p. 5, 19 を見よ)*

* この書物の pp. 332-335 を見よ。

平和のために祈りなさい

Soul Magazine とブルー・アーミー指導部は、われわれが見たように、バチカン・モスクワ協定を侵害しないように、ある意図的なやり方で、そして長期間にわたって、ファチマの聖母のメッセージを変造してきた。これは、アメリカ合衆国ブルー・アーミー総裁、Jerome J. Hastrich 司教が Soul Magazine の1984年3月/4月号において、なぜ、ロシアの回心のために祈る代わりに、「われわれはむしろ、ブルー・アーミーの会員たちが、彼ら自身が完全に回心するように、祈り断食するよう祈るべきである。...ロシアの『回心』のために祈ることは雄牛の前で赤旗を振るようなものと思われるであろう...そしてそれゆえに世界における平和のために祈る方がより賢明であろう...」と言っているか、その理由である。

ところで、ブルー・アーミーが彼らの諸政策を聖母のメッセージよりもむしろカザロリの外交に従って秩序づけてきたということを証明する同じ論考の中でのハストリッチ司教による一節がここにある:「われわれは、もしそうすることを望むならば、ロシアのためにはっきりと祈るであろう。しかしわれわれの公的なメッセージにおいて、われわれは...聖座がそのように一生懸命に統制し、方向づけようと努めている国際外交の微妙なバランスを崩すことを避けるべきである。」

編集者のコメント

ハストリッチ司教の声明はブルー・アーミーの国内指導部の方針並びにジョン・ハッファートおよび Soul Magazine の編集方針を代表していると思われる。Soul Magazine がブルー・アーミーの公式出版物であうということ、そしてそれがハストリッチ司教によるこの論考を載せた時、Soul Magazine はそこで、彼がアメリカ合衆国ブルー・アーミー総裁であることを指し示したということを思い起こそう。

ジョン・ハッファート、ハストリッチ司教そして彼らと意見が一致しているブルー・アーミーの指導者たちとは著しく違って、いとも聖なる三位一体の名において聖母が、教皇とすべてのカトリック司教は一緒にマリアの汚れなき御心へのロシアの奉献の荘厳、公的な行為を行うようにと命令なさった 注2)ということを思い起こそう。教皇と司教たちはロシアにおける国家無神論という神に反する公的な罪の償いの公的な行為を同時に為さなければならなかったのである。教皇と司教たちは彼らの職務とファチマの預言的メッセージによってファチマの聖母に従う義務に縛られている。教皇と司教たちによるそのような奉献と償いの行為は実際カトリック教会によるロシア共産主義の公的非難であろう。にもかかわらず、ファチマの聖母はロシアが回心するのはただこの命令への教皇と司教たちのこの従順を通じてのみであるとわれわれに告げておられる。

神の永遠の智慧そしてファチマの聖母の荘厳な要求とは著しく違って、アメリカ合衆国ブルー・アーミー指導部の明白な方針声明におけるハストリッチ司教とジョン・ハッファートは「分かりやすいように」ロシア人たちによって「雄牛の前で赤旗を振ること」として考えられ得る何かあることをすることを望まないのである。換言すれば、ハストリッチ司教に従えば、われわれは、ロシア人たちにほんのわずかでも気にさわるという口実を与えるであろうロシアの回心に関してはわれわれの公的立場において何一つしてはならないのである。

換言すれば、ハストリッチ司教と Soul Magazine はこう言っているのである -- ファチマの聖母が命令されたように、ロシアを公的、荘厳に奉献してはならない、なぜなら、これは共産主義ロシアの雄牛の前で赤旗を振ることだからである。

明らかに国内ブルー・アーミー指導部はファチマの聖母への従順よりはむしろカザロリ枢機卿の政策とバチカン・モスクワ協定政策、宥和政策を選んだのである。彼らは、バチカン・モスクワ協定を破棄され 注3)、ファチマの聖母に従おうと求めておられる教皇ヨハネ・パウロ二世の指導権に従うよりはむしろカザロリ枢機卿に従うことを選んだ。

多くの人々が今なおブルー・アーミーの国内指導部がファチマの聖母に奉仕しようと努力していると考えていることは実際大いに遺憾なことである。ブルー・アーミーの多くの一般のよい人々は欺かれているのであり、ファチマの聖母の完全なメッセージに明らかに反対している指導部を彼らの寄付と彼らの道徳的支持によって、善意をもって支持し続けている。しかし聖母と教皇ヨハネ・パウロ二世はファチマのメッセージに答える恵みによって引きつけられた小さな人々の道徳的支持、祈りと寄付を必要としておられる。彼らの支持はファチマの聖母によって命令されたものとしてのロシアの奉献をもたらすことに向かって最も重要である。この意向のために働き、祈り、犠牲し続けよう。ファチマの聖母の完全なメッセージを知らせるためにわれわれのできるすべてのことをしよう。ファチマの聖母を沈黙させる陰謀と今日天からのこの平和計画が実行されることを押しとどめるために用いられている神と聖母の敵どもの戦略とを暴露し続けることによって必ずわれわれ自身を、そして聖母の理想を擁護しよう。

  1. バチカン・モスクワ協定についてもっと詳しくはこの書物の p. 249 以下および p. 269 以下を見よ。

  2. 天の元后の公式的な要求は法的に見れば命令と等しい。

  3. 最近、1986年5月に、教皇ヨハネ・パウロ二世はその回勅におけるある短い節において再び共産主義を非難しておられる。この書物の p. 350 を見よ。

  4. この論考が書かれて以来、より最近の報道はバチカン・モスクワ協定が今なおバチカンによって従われているということを示している。この書物の p. 352 にある編集者注を見よ。

目次へ

2005/02/07 三上 茂 試訳

作成日:2005/02/07

最終更新日:2005/02/07

World Enslavement or Peace...It's Up to the Pope: Section X; Chapter 6 へ

マリア様のページへ

トップページへ

inserted by FC2 system